<17>

 行きに五日かかった道を、四日で戻ってきた四人は久し振りの故郷の前に居ました。
 しかし四人は無言です。

 物々しい、常の青の国旗とは違う、赤の国旗。
 それは、戦争が始まることを告げる――――――非常事態の時の国旗なのです。

「あの馬鹿王、性懲りも無く、」

 珍しくも苛立ちも露にラビが吐き捨てました。

「兄さん…………」

 リナリーが小さく呟きました。

「取り合えず、うちの店行きません?」

 アレンが控えめに提案しました。
 こんな所で立ち話もなんですし、特にラビは顔が知れ渡っています。

「そうさね…………」

 四人は人目を忍びながら街外れの酒場へ向かいました。







「戻ったか」

 町外れの酒場の中。
 特に見咎められず辿りついた四人は、相変わらず人気の無い店内でほっ、と溜息をつきました。

「クロス、この状況は?」
「見ての通りだ。王宮がアーテフィリアに宣戦布告しやがった」
「「「「…………」」」」

 想像通りとはいえ、思わずやり切れずに四人は視線を交わします。
 
「…………ん? お前は…………」

 クロスの視線がつつ…………と動き、リナリーの上で止まりました。
 その視線にはっ、とした顔で慌ててリナリーは腰を折ります。

「リナリー・リーです。お久しぶりです、クロス元帥。兄がお世話になっております」
「もう退役して長い。元帥は止めろ。…………しかし、これは驚いた。あの小娘がこんないい女になるとは」
「師匠…………その褒め方は無いです…………」

 ドン引きの口調でアレンが呟きますがクロスが意に介する様子はありません。

「コムイなら王宮に詰めてるぞ。泊まる場所が無ければ今夜は此処に泊まるといい」
「ちょっ…………」
「クロス…………」

 アレンとティキがリナリーの肩を抱きクロスから引き離すようにして入り口のほうへ引きずりました。

「え? え??」
「何考えてるんですか歳の差考えてくださいよ! リナリーはまだ十六歳なんですよ!?」
「そうだよおっさん! 犯罪レベルだろうが!」
「やかましいガキ共」


 ゴッ!


「いでっ!」「いたっ!」

 ティキとアレン、二人の額には小型の金槌がヒットしました。
 額に手を当てて涙目になる二人はリナリーを説明します。

「マジで駄目だかんな。今日此処に泊まるくらいなら城下の宿に泊まったほうがよっぽど安全だからね」
「そうですよ、大体うち空き部屋ありませんし。あの女好きにベッドにでも引き込まれたらたまったもんじゃありませんよ!」
「それ以前にんな事したらコムイが黙ってないさ…………」

 呆れ口調のラビがそう言いますがティキとアレンはキッ、とラビを睨みつけます。

「ラビは師匠の女癖の悪さ知らないからんな事言えるんですよ!!」
「そうだよっ! こいつ女なら何でもいいんだぜ!?」
「ふざけんな。何でも、はねぇ。美人限定だ」
「良くありません!」
「マジ歳の差考えてください本当勘弁してください身内から犯罪者出したくないんです」

 何故か敬語で言うティキを一瞥しクロスはラビに視線を向けました。

「でも、俺も好みなら下は10歳上は40歳位までいけるけどな…………」
「「「…………」」」

 その発言に今度はアレン・ティキ・リナリーがザザザ…………とラビから離れました。

「なにアイツ…………まともに見せて全然まともじゃないじゃん…………勇者様がロリコンとかないわー…………」
「10歳とかないですよ、幾らなんでも…………子供じゃないですか…………」
「…………」
「ちょ、何その反応!?」

 犯罪者を見るような冷たい目にラビは悲鳴のような声を上げます。

「どうでもいいがな。…………ジュニア、話がある。他は席外せ」
「え、世界変態会議ですか?」


 ゴンッ!!


 今度は先ほどよりも大きな金槌です。
 見事額の中央にヒットしたアレンはそこを抑えて蹲りました。

「…………。俺達が休憩する時に使う小部屋が裏にあるから、行こうか」
「え、ええ」
「ほら行くぞアレン」
「うううう…………」
「「…………」」

 ティキに抱えられるようにしてアレンが、そしてその後をリナリーが追い、三人は姿を消しました。







「んで? 何だ? 何か言いたそうな面じゃねぇか」

 三人が裏に引っ込んだ事をちらりと確認してからクロスは口を開きました。

「ああ。聞きたい事があるんさ」
「ほう?」
「教えてくれる?」
「物にもよるな。言ってみろ」
「じゃあ――――――」



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