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『…………君は、だれ?』
『    』
『「  」っていうんだ、俺はラビ。ねぇ、一緒に遊ぼ?』
『  』


『ねぇ、「  」俺たちずっと一緒に居られるよね?』
『    』
『うん、ずっと…………明日も明後日もその次も、ずっとずっと――――――』


『一緒に――――――…………』









「こんな所で月見かい?」
「!」

 辺りは既に闇に包まれています。
 酒場の裏。
 一人で薪の束の上に座って空を見上げていたラビに掛けられた声がありました。
 コムイです。

「コムイ。…………王宮はいいんさ?」
「まぁね。打てる手は全部打ったから…………」

 言いながら、よいせ、とじじ臭い掛け声でコムイはラビの隣に座りました。

「何、今回はどーいう設定にしたんさ?」
「陛下以下王宮の面々は流行り病、ってね。若い人達には感染しないようばら撒く菌は調整したけど」

 さらりとキナ臭いことを言い放ってから、コムイはそうそう、と呟いて懐から一冊の紙束を取り出しました。

「はい。頼まれてた奴。デザートローズの」
「…………あー…………それね…………実はもう片付いちまったんさ…………」
「だと思ってたよ」
「って、知ってたんかい」
「まぁねぇ」

 だったら教えてくれればいいのに、と膨れるラビにコムイは苦笑いします。

「一応、クロスに口止められてたんだよ。君に悪いとは思ったんだけど」
「本当に悪いさ。気付いた時の俺の衝撃分かってる? 何で露払いに超VIPが紛れ込んでるんさ」
「はは、ごめんごめん。まぁ彼もそこそこ腕は立つし、それにアレン君もいるし。大丈夫だと踏んだんだと思うけどね」
「…………アレンはこのこと知ってんの?」

 無言でコムイは首を横に振りました。

「…………ふーん、やっぱり…………。知らないからね、俺どうなっても」

 溜息交じりに呟いたラビは、再び空を見上げます。

「…………考えてたんさ」
「何を?」
「俺達のやってる事って、意味あんのかなって」
「…………」
「親父は、俺達の代に世界が平和なら、っつって死んだのに。十年でこのザマさ。――――――俺が『魔王』を倒して、それで世界は何か変わるのか?」
「…………全く無い、とは言わないよ。だけどかつて契約が結ばれたときとは大分世界が様変わりしているのは事実で、当時ほどの効果はもう無いんだろう。この事には」

 コムイの言葉にラビは眉根を寄せて、強く月を睨みつけました。

「意味が無いのに、しなきゃならない? どうして?」
「…………もし他に道があるならば。その方がいいんだろうね」
「人間はいつからこんなに馬鹿になったんさ」
「昔からだよ。契約が結ばれた背景を考えるといい。昔から、人は何も変わっていない。良くも悪くも」
「――――――…………俺は、」

 月の光に誰かを想い起こしながら、ラビは低く呟きます。

「『無意味』に『  』を殺す事なんか――――――できないさ」

 たとえそれが科せられたモノだったとしても。

 そう呟いたラビの背から視線を逸らすように、コムイは目を伏せました。







「アレン」
「何です? ティキ」
「お前今日、内側のベッド行け」
「あ…………。はい。月、出ちゃってます?」
「ああ。キレーな満月。間違っても見るなよ」
「ええ、そうします」


「気をつけないと、僕はラビに討たれちゃいますからね」


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