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「し、師匠。一体僕らに何を…………」
「あぁ? 聞いてなかったのか? こいつと一緒に魔王城まで行って来い」
「俺達は冒険者じゃねぇだろ!!」
ああやっぱりな、とラビが生ぬるい目をします。
「俺が鍛えてやってんだ。そこらの武器もまともに手入れ出来ねぇエセ冒険者よりは余程使えるだろ」
「あんたの弟子なんだ、じゃあ期待でk…………」
「商人の僕に何をしろって言うんですか!!」
「…………前言撤回」
旅をするのに商人。
中々笑えない冗談です。
「一通りは仕込んでやっただろうが。ごちゃごちゃ言わずにとっとと着いて行け」
「いーやーでーすー! 師匠一人にしたらまた借金増やすんでしょう!?」
「…………」
何だこの師弟。
ラビは無言で言い争う(というか、少年が一方的に食って掛かり、クロスは全く意に介する様子がありません)クロスと白い髪の少年を遠い目で見詰めます。
と、少年の隣にいた青年と目が合いました。彼は肩を竦めるとラビに近付いてきました。
「どーも。お騒がせしてます勇者様」
「勇者様ってのは止めてくれ、ラビでいいからさ」
…………つい先程道楽息子とか言ったよなこいつ…………と微妙に黒い事を考えながらラビは答えます。
「そー? じゃあラビ。何、本気で俺達連れてくつもり?」
「…………んー、」
鍛えてはいます。
腕にはそこそこ自信がありました。
今現在ならば、大陸を渡っても問題なくやっていけるでしょう。但し、魔王復活により魔物が強力化すれば話は別です。
「出来ればね。一人はやっぱ心許ないし、」
「ふーん…………」
「職業盗賊なんでしょ? 露払いには持って来いさぁ」
「そうだn…………待って待て待て待て、今聞き逃せない事言ったよねあんた」
「ああ、露払い?」
「戦死決定!?」
ラビはニコニコ笑いながら答えます。
「大丈夫、ちゃんと復活させるさ!」
「…………いやいやいや…………あんた、随分イイ性格だね」
「お陰さまで。道楽息子なもんで」
「…………」
黒い髪の青年の片頬がひく、と引き攣りました。
「分かった分かった、謝るよ…………勘弁してくれよラビ」
「まぁいいけどね」
「あれ? そう言えば…………俺盗賊だっつったっけ? クロスから聞いた?」
青年は怪訝そうな顔です。
それに、ラビは何でもないことのように答えました。
「そりゃ、装備みりゃ分かるよ。そのダガー、刃の所が変色してる」
「へ?」
ラビは青年の腰に下げられたダガーを指差しました。
「鉄がそういう色に変色するって事はそれ毒塗ってあるんだろ? ダガーを使う職は他にもあるけどそんな物騒な得物を使うのは盗賊だけさ」
「…………ご明察。やるじゃんあんた」
相手の外観からある程度を悟るのは、勇者でなくとも冒険者の基本中の基本でもあります。
「ガキの頃から仕込まれてる。ま、俺はどっちかってーと生き残る事を最重要視してた教育だったけど」
魔王の討伐に出ない予定だったからです。
魔王を倒す為の戦いの修練よりは、日常に潜む危険に対しての対抗策を教え込まれてきました。
「へぇ…………」
「ただ単に税金でタダメシ食って暢気に過ごしてる訳じゃないぜ?」
…………口さがない者達、特に魔王の脅威を知らないラビと同じ位の若い世代は勇者への尊敬の念は薄いのも確かです。
国に丁重な扱いを受ける勇者の家の者に正面切っては何も言えないものの、影で「税金泥棒」と罵る手合いがいるのも、そして恐らくは目の前の青年がその手合いだっただろう事も見越してラビは軽く鼻で笑いました。
見通された事に気付いた青年は気まずそうに肩を竦めます。
と、その時。
ゴンッ
「「??」」
突如聞こえた、鈍器で何かを殴りつけたような音にラビと青年は振り向きました。