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そこには、頭を抱えた少年と、そしてその頭を殴りつけたのだろう金槌を持ったクロス。
「ごちゃごちゃ抜かしてねぇでとっとと行けっつーんだよ」
面倒そうに言い放つクロスに、涙目の少年――――――アレンという名のようです――――――が頭を庇いながら呻いています。
「うううう…………」
「いー加減諦めなよアレン。そいつが行けっつったら行くしかねーだろ? 俺達の生殺与奪権はそいつが握ってんだ」
「…………うう、」
青年が少年に声を掛けました。
「だってティキ、こんなの酷いですよ…………帰ってきたら借金山盛りですよきっと…………」
…………どうやら少年は旅に出ることよりも不在中の事の方が心配なようです。
「今までのだって返せてないのに、旅なんか出たら返済が遅れて利息がっ!!」
…………苦労してるなぁ、とラビは再度生温い目をして…………それから、
「借金って、どんくらい?」
少年に訊きました。
「大体300000G位です…………」
「…………また増えたのかよ…………」
青年――――――ティキという名のようです――――――が天井を仰いで溜息をつきました。
それを聞いたラビは、顎に手をやってから少年に近寄り、蹲る少年の下に近付きました。
「?」
『なぁ、取引しようか。一緒に来てくれたらその300000G、肩代わりしてやるさ』
「!」
『無事に魔王を倒して帰還できたら成功報酬で留守中にクロスが増やした借金も俺が持つ。どう?』
「…………。…………。そんな断れないのは取引とは言いません!」
『但し一個だけ条件がある。無事に帰って来れた時に、俺がいいって言った事以外は吹聴しない事。オーケー?』
「ええまぁ…………構いませんけども」
「おっしゃ、決まりさ!」
パン、とラビは手を叩きました。
「決まったか。マネジメント料寄越せ」
「金取んの!? あんた何もしてないじゃん!」
「冗談だ。狸からせしめる。…………さっさと言って来い」
無事に雇用契約も交わされ、ひらひらと手を振るクロスに見送ら(?)れ三人は酒場を後にしました。
「じゃあまずは装備揃えよっか」
じゃらっ
ラビは金貨の詰まった袋を取り出しました。
「おいおい、どうせこんな国の、大した事ないだろ?」
「序盤から強い武器が手に入ったらバランス崩壊じゃないですか」
「そうでもないさ、金さえ積めば案外何とでもなる。大体此処は大陸盟主国さ。此処にあるよりいいもんなんて、余所にもない」
「そ、そうなんですか」
そう言うとラビは、城下町の武器屋をスルーして町外れへと歩いていきました。
「何処行くの?」
「『裏』の店が往来に堂々と店出せないからね。地下なんさ」
「へぇ…………」
「何か凄く危険な匂いがするんですけど」
「大丈夫大丈夫。王宮黙認だから」
「黙認なの!? 公認じゃないの!?」
ティキが顔色を悪くしながら叫びます。
そんな彼にラビとアレンはちら、と視線をやって、
「何言ってんですが堅気じゃない盗賊の癖に。貴方の品買い取ってる店だって『裏』の店でしょう?」
「いや俺は人から盗んでないし!!」
「盗掘って言葉知ってますか貴方?」
どうやらティキは遺跡や墓場関係専門の盗賊のようです。
「大丈夫だって。黙認してるって事は実質公認と一緒なんさ。特にこの国みたいに公権力が強い国はね。その気になれば、地下組織の一つや二つ幾らでも叩き潰せる。其れをしないって事は…………」
「@無害だと思ってる。A組織から多額の献金がある」
アレンが指折り数え上げます。
「まぁ此処の場合はAプラスアルファだけどね。どっちみち王宮と繋がりがあるならわざわざ国の庇護厚い俺達に喧嘩売るような真似はないさー」
…………暢気な調子ですが、ラビの言っている事は比較的キナ臭い話題です。
何かとんでもないパーティに加入しちまったな…………とティキは遠い目で西のお空を見上げたのでした。