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「何ですか?」
コムイの声に振り向いたアレンは、その唖然とした顔に不思議そうな顔をします。
そう、振り向いたアレンの手の中にはそのクレセントアックス。
それがまるで箒か何かであるように、軽々と掴んでいます。
「…………マジで?」
「アレンは馬鹿力だからねぇ。びっくりしただろ」
ティキがあっさりと答えました。
「…………アレン君、振れるかい?」
「あ、はい」
ブンッ
アレンがいとも簡単に振るったクレセントアックスから放たれた風圧で、離れている筈のラビ達の前髪が揺れました。
「こりゃまた…………」
「凄いね…………伝説の初代勇者の片腕だった戦士は、その豪腕で行く手を阻む大人の背丈程の巨石も砕いたというよ。彼の後にこれを使えた人間は居なかったから、この斧は本当に使用されていたのかなんていう議論も昔はあったんだけどね。…………君を見ていると、彼を目の前にした当時の人々の気分になれる気がするよ」
コムイは懐かしそうな顔で目を細めながら、そう言いました。
「じゃあ、アレン君はそれで決定だね。あとでカバーを持ってこよう。えーっとそっちは…………それにする?」
コムイは振り向き、壁に掛けられているレイピアを眺めていたティキに声を掛けました。
「あー…………うん、いい?」
「別にいいけど…………」
「いいんですかティキ? 何かあんまり強く無さそうな剣ですけど…………ってか壊れてませんかそれ」
確かにそのレイピアは、レイピアである事を除いても華奢な造りで、余り実戦向けで無さそうなものです。
抜け落ちたのか、抜き取られたのか…………嘗ては大小いくつもの宝石が嵌め込まれていたのでしょう、柄の丸い穴が何処か寂しさすら感じさせます。
「確かに柄の強度は良く無さそうさねぇ、他のにすれば?」
「…………や、これにする」
「「??」」
「君は南の出身かい?」
「そーだけど」
「いいよ、持って行って。…………血が呼ぶんだろうね」
「?」
「それはね、南の廃墟から出たものなんだ。ご覧の通りの有様だから、元は石がついてたのを盗賊か何かが抜いてったんだろうね」
「…………南の…………」
微妙な顔で剣を見下ろしたティキは、それを握りました。
「じゃーこれで決定。アレン!」
「はい!」
「「??」」
「こっからお前さんの本業さっ!!」
「了解ですっ!」
ぴっ、と額に手をやり敬礼したアレンが、ニヤリ、と笑いながらコムイを振り向きました。
その笑顔に、そそそ…………とコムイが後退りします。
「キリキリ」
「値引いて」
「「頂きましょうか?」」
「!!!!」
それから始まった値引き交渉戦は、夜が明けるまで続いたのでした。