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「装備、道具全部オッケー?」
「大丈夫です」
「…………荷物持ち、俺なのかよ」
「当たり前じゃないですか。何の為に貴方が居ると思ってるんですか?」
「俺の扱いってそんなのばっかり!?」
「今更気付いたんですか?」

 アレンの毒舌が冴え渡り、ティキは相変わらずの泣き真似です。きっと真似でしょう。

「リングベルまでは一日あれば充分の筈だから、日が沈むまでに着こう。この辺の森とは言っても夜になると危ないさ」
「分かりました」

 そうして賑やかな一行の旅は始まったのでした。




「今何時?」
「六時ですね。夕飯に丁度良い時間ですよ」

 あっさりと、それはもうあっさりと一行はリングベルの村に辿り着きました。
 出てきたのはスライムが数匹…………それも、ラビが掴んで「お家に帰れ!!」と叫びながら放り投げた為実質戦闘らしい戦闘は皆無です。

「じゃあ宿取って、夕飯にするかぁ。ついでにリナリーも探さないと」
「ラビ、そのリナリーさんと面識は?」
「小っさい頃に何度かね。可愛い子さ」
「へぇー。じゃあ益々以って気をつけてあげないと」
「待て待て待てだからなんで俺を一々犯罪者扱いしたがるの?」
「憂さ晴らし」
「意味分からんわ!! 憂さ晴らししたいのはこっちだ!!」

 今にも地面に荷物を叩き付けたそうなティキを華麗にスルーした二人はすたすたと宿に向かい、怒るのも馬鹿馬鹿しくなったティキは溜息をついて拳を下ろしました。



「リナリーちゃん? ああ、いるよ。あそこの四つ角の薬屋の二階に住んでるよ」
「ありがと」

 宿でリナリー・リーの住処を聞いたラビは、荷物を置いたアレンとティキに告げました。

「近くに住んでるってさ。行ってみる?」
「分かりました。ほらティキ、拗ねてないで行きますよ」
「…………。」
「キリキリ歩かないと顔を下にして引きずりますよ」

 この辺りの道は舗装も満足にされていないような道ばかりです。

「鼻が!! 鼻が削れる!! もげる!!」

 肩を抱いて震え上がるティキを従え、一行は薬屋の二階を訪ねました。







「あら、ラビ! 久し振りね」
「リナリーも元気そうで何よりさ」

 薬屋の二階。
 訪ねてきた男ばかりの一行を、リナリーは暖かく迎えてくれました。
 成程、兄の心配も頷ける美少女ぶりです。…………行き過ぎではあるかもしれませんが。 

「突然で悪かったさぁ」
「ううん、兄さんの鳩が着いてたから支度してたわ。ほら、大家さんにオーブンを借りて焼いてみたの」

 笑顔でリナリーが焼き菓子を進めてくれました。
 其れを見たアレンの目が光ります。

「兄さんは元気?」
「まーな。本業は暇らしいけど」
「そう…………。もうどれくらい会ってないのかしら…………」

 寂しげにリナリーが俯きました。

 焼き菓子に夢中のアレンは兎も角、その様子にティキは内心首を捻りました。
 此処リングベルの村と王国は、それほど離れていません。
 大人の男の足なら四時間も掛からないでしょう。
 見た所彼女は一人で暮らしているようです。広いとは言い難い部屋に、整頓されているとはいえ生活の品は全て置かれています。未成年のようですが親と暮らしているようではありません。
 ならば、あれだけのシスコンっぷりを披露したコムイが何故彼女を手元に置かないのか…………口に出すとまた変態扱いされるのが関の山と悟っているティキは、無言で首を傾げました。
 その間にもラビとリナリーのお喋りは続いています。

「魔王討伐に出るの?」
「ああ、うん。まぁしょうがないさぁ。気乗りしないけど」
「…………そう…………」
「んでさ、リナリー。俺達と来てくれない?」
「え?」  
「俺達三人しかいないんさ。まぁ…………」

 ちらり、とラビがティキを見ました。

「変な事は絶対無い様に厳重に見張るから」
「…………」

 最早言い返すのも面倒になったティキは、反応せずに無言でいました。

「え、ええ…………大丈夫だけど」

 リナリーが若干引いた顔でティキを見ました。
 その表情にティキはまたいじけたくなります。

「出立の準備、どの位掛かる?」 
「そうね、明日の朝には出れるわ」
「話早いさぁ! じゃあ、明日の朝村の入り口集合でいい? 俺達宿に泊まってるから」
「分かったわ」

 話は纏まったようです。
 まだもぐもぐ口を動かしているアレンにリナリーは残りの焼き菓子を包んでくれ、それを持って三人は宿へと戻ったのでした。




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