(またやりやがった何度言ったら判るんだあの鳥頭)
鏡に映し出された首筋の紅い跡を指で辿りながら、心の中でこれをつけた張本人を罵倒する。
跡は付けるな特に見えるところには絶対、と毎回厳命するのにも関わらずそれが守られるのは三回に一度位か。
しかし何はともあれついちまったもんはしょうがない。
この場合、被害者たる神田が取る行動は一つ。
ちゃきん。
取り出したるは相棒六幻。
装備型対アクマ武器、イノセンスを発動させてない状態でも十分な切れ味と殺傷能力を持つ、斬って良し突いて良し殴って良しの銘刀だ。
それを大きく振りかぶって――――――――――――――渾身の力で振り下ろした。
ゴスッ
鈍い音が、した。
恐らくはベッドのマットのスプリングのコイルがお亡くなりになった音だ。もしかしたらその下のフレームもイカれたかもしれない。当然だ、これまで幾度となくアクマを殴り殺していた武器が(本来の用途からは大分外れているが)渾身の力で振り下ろされたのだから。しかしながらそれは彼の求めた感触では、ない。
「チッ…………外したか」
「外したか、じゃないさ…………」
紅い頭の僅か横、数センチと離れていない場所に直撃した己が武器に神田は苦い顔をする。
ブックマンの跡取りとしての勘か戦士としての才か、はたまた命の危機に瀕した生き物の偉大な力か。
間一髪で神田の一撃を避けたラビは他と比べて明らかに凹んでいる箇所を視線だけで見ながら溜息を吐いた。
「殺す気さ…………?」
ドスッ、と体重をかけながら今だ寝そべったままのラビの上に、神田は馬乗りになった。目が笑っていない極上の笑顔でラビの顔を覗き込む。
「あははこの程度で死ぬようなタマなら今頃100回位死んでるんじゃないかこの色魔。ところでお前何を暢気に寝てやがる昨日は昨日でヤルだけやって出したいだけ出したらとっとと寝やがって。朝俺が起きた時お前のが出てきた瞬間どれ程俺が父上と母上に土下座したくなって死にたくなったか分かってるのかコラ」
「あー…………ごめんごめん」
「全く以って誠意が篭ってないなお前大体何度言ったら分かるんだ跡は残すな、それすら守れないならもうヤるな」
「…………そりゃユウも困るんじゃねーの? 何だかんだ言いながらユウだってよがって…………ああスイマセンユウさんモウイイマセンクチゴタエなんかシマセンのでその武器下ろしていただけませんか」
グリグリと六幻(鞘入り)で頬を付くと、ラビが諸手を挙げて降参のポーズを。
「本当にどうしてくれるんだよこの跡、いっつもいっつもわざわざ団服から見えるような位置に付けやがって…………」
「よし分かった責任とるさ!」
「はぁ?」
「木の葉を隠すなら森に隠せ! 首中真っ赤にしたらバレな…………痛ぇっ!!」
「いやもう何て言うかお前頭良いくせに真性の馬鹿だな、俺はあれか何かにかぶれたアレルギー患者か? 本当お前一回死んでみてくれないか? ああむしろ殺してやろうか? 尚罪状は俺に対する度重なる強姦とセクハラだ」
「えー、殺せるモンなら殺してみてよ?」
「ほーう、じゃあタマ握り潰しの刑だ」
「えっ、げっ、ユウそれだけは…………ひっ、●×△□※@〜〜〜!!!!!」
暗転。