昔々、ある山の麓に薬師の兄妹が暮らしておりました。
 兄は妹を大変愛しておりましたので、いい年こいて嫁の一人も貰わず、また年頃になった妹を嫁に出そうともせず、そして妹は妹で兄を一人にしたら何をするか分からないとの理由で一緒に暮らしておりました。
 
「じゃあリナリー、ちょっと薬草を取りに行って来るよ」
「行ってらっしゃい、兄さん」
「戸締りには気をつけて。知らない人間を家に上げてはいけないよ? 急患だって言っても僕が戻るまで待ってておくれ」
「…………早く行って来て、兄さん」

 …………兄は山へ薬草を取りに。妹はお家でお留守番をする事になりました。





「おや…………? あれは…………」

 山の奥深く。日の当らない当りに生える薬草を摘んでいた兄は、ふと竹藪の奥から光が漏れているのに気付きました。

「…………先客、じゃないな…………」

 この辺りは天狗や鬼が出るとかで滅多に人が寄り付きません。因みにその噂を流したのは兄です。そうすれば無駄に、用も無いのに妹狙いで家に寄り付く人間が減ります。

「…………ふーむ」

 ある意味怖い物無しな兄は、ふらふらとその光の方へと近寄っていきました。



「これは…………」

 輝いていたのは、一本の竹でした。
 竹の下の方、兄の腰の辺りの部分が輝いています。

「非常に珍しいな…………」

 言いながら兄は鉈を取り出しました。注意深く、その輝く部分には傷をつけないように上のほうを切り落します。
 そこにいたのは、

「これは…………子供?」

 生まれて間もないと見える、小さな小さな子供でした。






「リナリー、リナリー! 見てご覧!!」
「まぁ、どうしたの兄さん…………、…………!!」

 薬草を籠に入れ、そしてその竹から見つけた子供を抱いて兄は家に戻りはしゃぎながら妹に見せに行きます。
 夕食の準備をしていた妹はその子供を見るなり顔色を変えました。

「にっ…………兄さん!? 何処から攫って来たの!?」

 中々素晴らしい信頼関係です。

「やだなぁ、嬰児誘拐なんてしないよ。竹の中から見つけたんだ」
「…………竹?」

 訝しげな顔をする妹に兄は事情を話しました


 〜兄説明中〜


 〜兄説明終了〜


「はー…………でも困ったわね、赤ちゃんの育て方なんて分からないわ…………村の産婆さんの所に行かないと」

 妹は溜息をつきながら、赤ちゃんを兄から受け取りました。泣く様子も無い、大人しいいい子です。
  
「あらあら、いい子ね」

 そんな様子に思わず妹は頬を緩めました。兄もそんな妹の様子を見てやに下がっています。

「さぁ、赤ちゃんのご飯を作らなきゃ。兄さん、薬草は分けておいてね」
「分かったよ、リナリー」 






 竹から生まれたその幼子は、三月ばかりであっという間に大人の姿に成長しました。
 美しく成長したその子供に、兄は「かぐや姫」という名を与え、大人となった証に盛大に髪上げと裳着の式を執り行い、そしてそれと同時に美しき姫「かぐや姫」の名は遠く都まで聞こえるようになりました。  
 





 所変わって京の都。
 内裏の内、誰もが憧れて止まない見目麗しい公達が顔を付き合わせての噂話を楽しんでおりました。

「なあ、アレン聞いたか? あの噂」
「あの噂って…………あれですか? 何でも辺境のド田舎に、こっちでも見かけないような物凄く綺麗なお姫様がいるっていう…………」
「そうそう! あのかぐやって姫さんのことさ!」
「有名だよな、こないだも下っ端の奴らがその話してたぜ?」
「村の金持ちとかが言い寄っても絶対首を縦に振らないって言う…………」
「へぇ、面白そうじゃん! 俺達もそのお姫様、見に行ってみようぜ!」


 …………京の女人の憧憬を御身に集める五人の公達が、そんな計画を立てておりました。


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