三十分前。

「戻りました」
「遅かったな」
「モヤシの奴が駄々捏ねやがったんです。シンデレラ役が嫌だとか何だとか…………」
「…………ほう?」

 親子の私室。
 姿を現した息子を父親が労うと、むっとした表情の息子がぶつぶつ文句を言っておりました。

「ったくあのクソモヤシ、俺だって面倒だ」
 
 一人だけ逃げおおせたシンデレラ(旧)に思うところがあるようです。
 
「…………ふん、まぁ、いい。珍しい事もあったもんだ」
「…………?」
「それにしても誰の馬の骨とも知れぬ奴にお前をくれてやるのは、惜しい」

 いっそ俺のものにならんか、と息子に囁くにしては怪しいセリフを耳元に吹き込みます。
 さり気無く回された手を軽く払いのけながら、王子は言い返しました。

「…………。母上に言いつけますよ」
「…………。」

 母上の王妃ティエドール様は本日体調が優れないとのことで伏せっておいでですが、夫が可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い(以下略)息子に手を出したと知れば、容赦手加減はなさらないでしょう。
 
 名残惜しげに腰を一撫でしてから手を離した国王陛下はつまらなさそうに溜息をつきました。 
 
「その脅しは誰から習った?」
「視覚的暴力な母上からです。父上が俺の体を撫で回し始めたらそう言えと」

 …………まぁ視覚的暴力ではあります。
 
「…………ちっ」」

 小さく舌打ちした国王陛下は、

「お時間でございます、陛下、殿下」

 お付きの者の声に、重い腰をあげました。 





「おい」
「はい?」
「何であの赤毛の小僧がここにいる?」
「代役です。シンデレラの」
「…………」

 頭痛を堪えるかのように眉間を抑える父君に王子は不思議そうな顔をします。

「? 最初仕方ないから(リナリーからの制裁がタチ悪い)俺が代わりにやろうかと思ったんですが丁度いいところにあいつがいたので」
「…………お前の方が万倍似合うがな。…………が、どうやって王子とシンデレラ一緒にやるつもりだったんだ?」
「…………?」

 王子のおつむはあまり良くないので、不思議そうな顔をするだけです。

「…………つまりだ。これから此処でお前はシンデレラと踊るんだろう」
「はい」
「そのお前がシンデレラやってたら、どうやって踊るんだ」
「…………、…………、…………!!」

 噛んで含めるような父上のお言葉に、王子ははっ、とした顔をします。

「そういえばそうですね」
「…………、馬鹿な子程何とやら、だな」
「?」
「行って来い、全部終わらせろ」

 ひらひらと手を振る父上のお言葉に頷き、王子様は一際目立つ――――――勿論悪い意味で――――――シンデレラ(赤)の下へ、向かいました。


 

 

 





 数曲を踊った二人は、会場を抜け出してお庭へと隠れました。

「十二時になったらお前は一度帰るんだろ?」
「んー、まぁね。…………でもさ、いっそのこと」


 ドサッ


「うわっ」

 シンデレラ(赤)が足払いを掛けて、王子様を草の上へ転がしました。
 その上にひょい、と圧し掛かるシンデレラ(赤)。

「てめ、何、」
「此処で二人は結ばれ末永く幸せに暮らしましためでたしめでたし…………ってのはどう?」
 

 にっこり。


 シンデレラ(赤)が微笑みます。が、憮然とした表情の王子様が、

「女装した野郎と青姦する趣味ねぇよ」
「…………ユウちゃん、言葉選んで…………」

 
 がっくり。
 
 
 思わず項垂れるシンデレラ(赤)。
 
「大体そんな言葉何処で覚えてきたんさ!」
「父上」
「だと思ったさ…………」

 あの駄目男、ユウに悪い影響しか与えないさ、とシンデレラ(赤)がぶちぶち呟きます。

「ま、でも…………脱いじまえば同じか…………」

 聞き様によってはアダルティなお言葉です。
 
「…………ユウの部屋、何処?」
「二階、の南の端」
「了解!」

 お姫様抱っこにされた王子様はシンデレラ(赤)により部屋に連れ込まれ――――――
  
 
 そして見事既成事実を作り上げた二人は結婚を許され、末永く仲良く暮らしました。







 一方、シンデレラ(白)は…………

「アレンー、ねぇ、アレンってばー」
「ほっといてやれよロード…………」

 お屋敷で燃え尽きたままでしたとさ。
 めでたしめでたし?

「何がめでたいんですかぁぁぁっ」
「お、復活した」
「次回上映は白雪姫だってぇ」
「また嫌な予感しかしないんですけど!?」




<終>

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