「確かに受け取ったよ。大公宮に連絡しておくから、後で謝礼を受け取りに行くといい」
「あんがと」
「大公様のお加減はどうなの? 兄さん」

 薬泉院。
 リナリーのお兄さんだというコムイさんに僕らはサラマンドラの羽毛を渡した。

「今は落ち着いていらっしゃる。この羽があれば、完治なさるだろうね。…………ところでリナリー、無事で良かった。マスターからサラマンドラの所に行ったのが君らのギルドだと聞いて血の気が引いてたんだよ」
「大丈夫よ(ちょっと死に掛けたけど)」
「…………本当かい?」
「本当よ」

 …………コムイさんが心配そうにリナリーと会話している。
 そんな様子を、僕は少し離れて見ていた。
 …………少しだけ、ちょっとだけ、羨ましいようなそんな気がした。

 …………ま、もっとも師匠じゃ僕を心配っていうか、何ていうか…………だけど。

 離れた所でその兄妹のやり取りを見守っていた僕に、フロースガルさんが声を掛けて来た。

「アレン君」
「あ、はい、」
「私はそろそろ行く事にするよ、先程大公宮の使者から呼び出されてね」

 …………流石トップクラスのギルドの人だ。大公宮直々にお呼び出しがかかるなんて。

 そんな事を考えていたのがバレたのか、フロースガルさんは苦笑顔で、

「用件は雑用だよ、大したことは無い。此処の大臣は人使いが荒いんだ」

 そして、フロースガルさんが微笑んだ。

「君らと共闘できて楽しかったよ。機会があれば、是非また」
「あっ、はいっ、こちらこそ!」

 足を引っ張った身で言うのもなんだけど、勉強になったし、また是非ご一緒させて欲しい。
 それじゃあ、と軽く頭を下げあって、フロースガルさんは踵を返した。
 …………そして、部屋の入り口近くでいつも通りの無表情で腕を組んでいる神田に向かって、何か話しかけている。
 神田も珍しく無視するわけでもなくちゃんと受け答えしていた。

 …………何話してるんだろう?

 盗み聞きなんてどうかと思ったけれど、気になったので思わず耳を澄ませた。




「神田君、また腕を上げたね」
「…………最後の最後にぶっ倒れた奴に言う台詞とは思えませんが」
「お世辞じゃない、本当だよ」




 …………やっぱり、あの二人…………知り合いなんだ…………

 胸の何処かに鈍い痛みが走る。
 息苦しさとやり場の無い何かを抱えたまま、更に彼等の会話に耳を澄ます。



「君はこれからどうするんだい?」
「…………また潜ります」
「そうか…………けれど一人旅は危険だ、十分気をつけたまえ」
「…………」
「ではまた、縁が合ったら会おう」
 

 ガチャッ…………パタン、


 そう言ってフロースガルさんが出て行った音がした。
 
「…………」

 暫くの沈黙の後。
 

 ガチャッ、


「っ、」

 再度ドアが開かれた音。
 その音に、僕は慌てて追いかけた。




「まっ、待って下さい!!」
「…………」

 僕が追いかけて声を上げると神田は心底嫌そうな顔をしながら振り向いた。
 丁度武器が届くか届かないかの位置で僕と神田は相対する。

「神田、…………有難うございました」
「…………」

 昨日の事の所為か、神田からは警戒するような空気が感じられる。
 呼吸を軽く整えてから、続けた。

「君と一緒に戦えて、良かった」
 
 そう言うと、神田が顔色を変えた。
 それは不思議そうでもあり、戸惑っているようでもあり…………

「どうやら僕らはまだ君の足を引っ張らないように、とは行かないみたいです。…………だけど、」
「…………」
「僕らが強くなったら、その時は…………この間言った通り、」
「…………俺は何も言ってねぇぞ」
「足手纏いじゃなきゃいいでしょう? …………もし断ったら、」

 そこで言葉を切ると神田が少し怪訝そうな顔をした。
 それに僕は笑顔で、極上の笑顔で続けた。

「…………僕と神田の関係についてある事無い事言い触らしますからねっ!!」
「…………あ?」
「ほらそうすれば虫除けにもなりますから」
「…………なんだそのある事無い事ってのは…………」

 あ、反応してきた。

「知りたいですか?」
「…………」

 …………睨みつけられた。

「ふふふ…………それはまぁ噂になってからのお愉しみですが」
「…………」
「…………ふふふ、」

 …………神田は溜息をついて、

「付きあってられるか馬鹿」

 そう言って踵を返した。
 
「…………」
「…………あーあ、振られちゃったじゃんアレン」
「いたんですか。良いんですよラビ。どうせ行き場所は一緒です」
「?」



 僕の宿の部屋が神田の部屋の隣って言うのは…………ただの偶然ですよ? ええ。
 


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