月曜日、全校朝会。 『続きまして、新任の保健体育の先生を紹介します。神田先生、壇上へどうぞ』 「新任?」 密やかに交わされる会話。疎むような眼差しは壇の傍に控える見知らぬ相手へ注がれ、 「ん?」 壇上を遠目に仰ぐ学生達には、腰程まで髪を伸ばした教師の姿が映る。現在校内唯一の女性だった養護教諭が産休中で女性と接する事が殆ど無い彼らは俄然沸き立つが―――――― 『静かに!! 神田先生、何か一言…………』 マイクを受け取った教師は小さな溜息を零し、それから。 『…………。おいガキ共、期待に添えなくて悪ぃが、俺は男だ』 およそ挨拶とは程遠い事を言い放った。 「ぎゃははははは! ユウってば掴み最っ高!!」 …………何故か一人だけ腹を抱えて笑い転げる、地歴の教師一人を除いて。 職員室。多くの教職員の視線は新たな同僚へと注がれていた。 「それでは神田先生、宜しく頼みますよ」 校長室へと引き上げていくその背を見送った神田は、隣のラビに横目になりつつ訊いた。 「何で地歴担当のお前が保体の俺のフォロー役なんだよ」 ひっでぇ、と笑うラビを無視して机の上を片付け始めた神田に、覚悟を決めた顔の国語教師、リーバーが近寄った。 「あー…………神田先生はラビ、先生と知り合いなのか?」 話しかけられた事にか内容にか、訝しげな顔を浮かべる神田に早速仕事だと言わんばかりにラビが割り込んだ。 「ユウ、国語のリーバー先生ね。そうなんさ、俺とユウ同じ大学出身」 質問に対する返答は無かったが、何とか返事は返されてリーバーとそれを見守っていた教職員達はほっとした表情をする。 「前任の休職から今までの間、授業はどうしてた?」 面倒くせぇ、と呟いた声を拾ってラビが笑う。 「まーいーじゃん、多めに見てもらうって事で。授業は明日から?」 早速渋い顔をする神田にラビは笑い。 「ま、頑張ろうぜ神田せ・ん・せ・い」 「アレン、新任の保体の教師の授業もう受けたか?」 朝。一つ年上の友人達に階段の踊り場声を掛けられて振り向いた。 「いえ、うちのクラス昨日体育の授業あったんですけど来ませんでした。今日かららしいですよ、授業するの」 彼の言いたいことも分かる。養護教諭が休職に入ってからこちら、校内にはただの一人も女性がいないというとんでもなくむさ苦しい状態だ。 「野郎が増えたって嬉しくねーよなー…………」 そんな愚痴に、苦笑いで頷いた。
体育館に集められた学生達――――――男子校の事である、見事にブレザー姿ばかりだ――――――は週の始まりに気だるげな顔をして退屈極まる学校長の訓示を聞き流している。
私語でざわつくことも無いのは学生達の意識が高いというよりは彼らは理解しているのだ、騒げばこの退屈な時間が延びるだけであると。
しかしそんな彼らの気だるい沈黙は、学校長の一言によって破られることになる。
「あぁ、あれだろ? 体育の後藤が柔道部の奴に投げられて怪我して休んでるって」
「あー…………じゃあ今日から保健の授業再開すんのかよ、マジでダりぃ」
「お?」
「あぁ?」
「おい、あれ女か!?」
「マジでか、やりぃ!!」
低い、それこそ声変わりを終えて間もない彼らよりも余程低い声での第一声に落胆に肩を落とし、まるで通夜のような雰囲気が体育館中を満たした。
休職中の前任者の資料をざっと眺める彼に、近頃頭皮が気になる学校長が笑顔で声を掛ける。
「はい」
「ラビ先生、フォローお願いします」
「はーい」
「しょうがないじゃん? 今俺担任持ってないから割と手ぇ空くし、資料読み込んであるから色々早ぇし」
「悪意を感じる」
「…………?」
「あぁ、それでか!」
「…………宜しく」
全校朝会に先立って同僚になる教職員達には勿論新任教師として紹介されているが、その時の対応は全校朝会のアレと大差無い。たった数十秒で彼らからの新任教師への感想は「取っ付き辛そうなのが来た」だ。此処でも一人爆笑していたラビの存在が無ければ空気が凍り付いていただろう。
「手が空いてれば担任が、空いてなきゃ別の教師が見てた。保健はまぁ適当、体育はバスケとバレーのローテーションね」
「要領完全無視かよ」
「あぁ。…………しかし遅れてるの取り戻すのに骨が折れる」
「キモい」
手すりにもたれながらひらり、と手を振るのに片手を振りかえして答える。
「ふーん? 俺達ん所今日保健あるわ」
「じゃあ初授業ですね」
「言ってやりたい事あるしな。この詐欺野郎! って」
「あはは」
だから勿論一瞬期待した周囲の気持ちだって分かる。僕自身もちょびっとだけ期待した。どうこうしたいとかじゃなくて、こう、潤い的なものが欲しい…………。
ツイッターで呟いてましたが、夢でラビュが高校教師な夢を見ました。
それがこれ。地歴の教師ラビ×保体の教師神田。ラビの学校に神田が赴任してきたよ! でも元々二人は付き合ってるし同棲もしてるよ!!な話。
まぁメインはそこではなかったんですけれどもね。
尚タイトルは考えるのが面倒だった。後で変えるかもしれません。
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