愛してる
愛してる
愛して、る?










  
 信じていた
 信じてなかった
 愛してた
 愛してなかった

 偽りだと知っていて
 真実であれと祈っていた。


 滑稽な事だ。
 俺は全て知っていて、分かっていた筈なのに。
 
 
 ――――――この結末で、さえも。



 振り上げられた相手の武器を、足を潰され避ける事もままならぬまま、最早これまでと見上げた。
 …………乱れた前髪で、奴の顔が見えない。
 なあ、今お前は、

 どんな顔をしているんだ――――――?




 痛みを感じる間も無く感覚は全て失われ、そして意識も全て砕けて消えた。













「ユウッ!! 後ろ…………っ!」
「――――――!」

 レベル1が100体以上、レベル2が4,5体程。
 二人でコレだけ倒せば、疲労も溜まる。
 それでもアクマが密集していた空間も風通しが良くなってきて、ちょっとだけ油断した――――――そんな瞬間。

 俺の背後を取ったアクマを倒そうとユウが飛び出して、
 その後ろにはレベル2がいて、

 俺に向かって、胸を串刺しにされて倒れこむユウの体は、重かった。

「――――――っくそっ…………! 劫火灰燼、火判!!」

 近くにいたアクマを焼き尽くして――――――そして俺は慌ててユウを抱き上げた。
 
「っ…………!」

 傷は明らかに致命傷だ。
 だけどそれだけだったなら俺はこれ程までに絶望しなかっただろう。
 ユウの紅く濡れた胸。
 そこにある筈の黒い梵字は、消えてなくなっていた。

 それが命の尽きたという証明である事を、俺は知っていた。

 
  


まるで悪夢が如く
浮遊する夢を見る。
 






「…………コムイ、」

 死んだ探索部隊の持っていた通信機で、俺はコムイに連絡を取る。

『ラビ! …………大丈夫かい?』

 此方の戦況が不利であった事は、生存時に探索部隊が連絡済だったのだろう。

「イノセンスは無かった。アクマは152機、全機殲滅した。――――――だけど、」

 声が、震えた。
 
「――――――ユウが、殉職した――――――…………」
『――――――…………』

 通信機の向こうで、コムイが沈黙した。
 痛い程の時間の後、ぽつりとコムイが呟いた。

『一時間ほどの所にアレン君達がいる。彼らを増援として向かわせるから、共に帰還を。――――――神田君の遺体は、運べるかい?』
「…………うん、大丈夫」
『くれぐれも気をつけてくれ。六幻を狙ってアクマが襲ってくるかもしれない』
「…………うん、」
『――――――ラビ、大丈夫かい?』
「――――――うん、」

 大丈夫、じゃなかった。 
 現実じゃなかった。
 冷たくなり始めた体を抱きしめながら尚、俺にとって其れは全くリアリティを欠いた、夢幻のような、

 けれど醒めはしない これは夢じゃなく、現実なのだから。






「――――――…………」

 コムイから聞いていたのだろう。
 合流したアレンは、堅く唇を引き締め、眦に涙を湛えて、だけど何も言わなかった。
 
「アレン、六幻の方頼んでいい?」
「…………分かりました」

 それから、どうやって教団まで帰ったか覚えてない。
 ただ、出迎えに来たコムイや科学班の奴らのの悲痛な表情を覚えているだけで。
 俺はユウの亡骸を医療班に引渡し、そのまま部屋に戻って泥のように眠った。
 
夢も何も、見なかった。





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