本部を後にしラビを背に負い、森の中。
 木々が乱立する森の中は竜体での行動には適していない。人の姿を取り、地から辺りを見回す。
 飛んでいる間にざっと森全体を俯瞰したがそれらしき竜の影は無かった。人の姿をとっているのかも知れないし、何処ぞに隠れているのかも知れない。

「青竜ね…………そういえば此処でもあんまり見ないさね、人数は多いって話なのに」
「そう見えないだけでそれなりにいる。奴らの血は劣勢だからな。他色種と交わると特徴が出づらい」

 しかもこの辺りには海も無い。一応池は設えられているが竜が一頭入れば余裕のない人工の池は人の例で例えるならば狭い風呂のようなものだ。
 青竜種は五色種の中で唯一海で暮す種族だ。元々其程陸の上での行動には適していない。血の濃い奴程来たい場所ではないだろう。

「ふーん…………やっぱ色でどの特徴が出づらいとか、あるんさ?」
「あぁ。他と交わって一番出やすいのは赤だ。次いで、金、白、黒、青。大体その順だな。もちろん例外もある」

 赤と青の混ざり子の筈なのに孵ったのは赤のストレートだったという話を偶に聞いている。そういえばあの白のチビは白と赤の混ざりだというが随分白が強く出たものだ。珍しいパターンだろう。

「アレンは白と赤らしいけど、どっちかっていえば白だし?」
「ティキもな。黒と金だが黒だ。――――――あぁ、アイツは母親が黒のストレートで父親が黒と金の間の子だったか」

 元々黒の血が濃いんだろう。
 そんな事を話しながら森の中を探しまわる。身軽に倒木を乗り越えたラビの直ぐ傍に立つ。

「で、気配する?」
「…………少しな」

 最初に降り立った場所よりは多少気配が強くなってきた。だが、弱い。弱々しいとも取れる。
 余程弱い竜なのか、子供なのか、それとも何かがあって弱っているのか。――――――弱い竜ではないだろう、下っ端とはいえ赤竜を退けるほどだ。そして子供でも無い。子供であればとっくに赤竜に保護されているだろう。
 となると、何かあって弱っている可能性が高い。

「うーん、何処にいるんかねー青い竜さーんでーてきーてさー」

 調子外れの鼻歌を歌いながら無防備にザクザクと進んでいくラビの後ろを歩きながら、気配を探っていった。








 その瞬間は突然だった。


 ズルッ


「へ?」
「っ!? ラ、」

 足を取られてガクリ、と体が傾く。下草が生えていて気づかなかったけどそこには踏みしめるべき土がない。驚いたユウが手を伸ばすが数センチの差ですり抜けていく。
 何時かにも同じような事をしたのをふと思い出す。あれは本当に小さい頃だ。ユウと初めて会った頃。
 直ぐ後ろに居たはずのユウを下から見上げるような格好のまま、俺は落ちる。どんどん小さくなるユウが、竜の姿をとったのが見えた。だけど木々が鬱蒼と生い茂る中ではそれはかえってユウの動きを制限する結果となる。枝に体を取られて焦った調子の叫び声を上げる。

 あ、やべ、死ぬかも。

 そんな事を思ったのとユウの咆哮を耳にしたのを最後に、俺は意識を手放した。









ぴちゃ、と顔の上に何かが降ってきた。

「…………ん?」

 冷たいそれを手の甲で拭う。
 目の前には細い木の枝や青々とした葉。尖った先にはキラキラ煌めく水滴。
 …………どうやら命拾いしたらしい。

「っ、と、」

 全身に力を入れてみる。痛む所は背中が少し。
 枝や葉がクッションになって、衝撃を和らげたか。

 恐る恐る体を起こす。歩けないようなこともなさそうだ。

「結構落ちたなー…………」

 17、8メートル位はありそうだ。
 見上げた先はとてもじゃないけど登れそうにない。

「うーん…………」

 ユウの気配は無かった。人の姿で、多分俺を探している。竜体は強靭でも人の姿の耐久性は人とそう大差ないようだから、飛び降りてくるようなことはしないだろう。恐らく何処かから迂回してくるはず。
 適当に歩きまわれば気配が引っかかることもあるだろう。

 そろそろと立ち上がった俺は鬱蒼とした茂みの中に入った。
 直ぐ近くで、俺の気配に牙を剥き出して唸る存在があることになど気づかないまま。





 →13


 注・迷子が動きまわってはいけません。

 ラビ×ユウトップへ
 小説頁へ