ラビュで同棲前提。アレンはノーマル。
 ラビが浮気してます。
 R-15につき注意











 今日の僕は厄日に違いない。
 アレンは目の前の光景に、思わず現実逃避気味に考えた。
 アレンの隣にいるこの部屋の住人の片割れからはまだ何のリアクションも無い。
 だが、隣の片割れと、今アレンと彼の目の前のベッドで見知らぬ(少なくともアレンにとっては、だが)女に覆いかぶさっている方のもう一人の片割れの方との関係性を思えば、これが何事も無く終わる筈も無かった。



 高校生の頃からの腐れ縁である二つの上の友人達、今アレンの隣の神田とベッドの上で見知らぬ女とよろしくやっていたラビの関係はアレンが知る限り所謂「恋人」という物だ。その筈だ。まぁ、この光景を前に神田が一方的に終了させていなければの話だが。
 どうしてこうなった、と思わず嘆きたくもなる。二人とは腐れ縁をこじらせて大学どころかバイト先まで同じだった。今日は三人の中でラビだけシフトに入っておらず、一緒にシフトに入った神田に仕事上がりに飲みに、若しくは作りすぎた昨日の食事の残りを食べに来る様に言われて来たのだ。タダ飯につられて修羅場に遭遇とは、酷すぎる。

「ユ、ユウ、あの、これは…………」

 あーあこれラビ死んだな。絶対死んだな。アレンは青褪めて行くラビの顔色にそう思った。さて神田はこの状況にキレて殴りかかるか、竹刀や木刀で斬りかかるか。アレンの知る神田とはそういう人物だ。間違っても恋人の浮気に絶句し青醒め泣き出すような女性めいた性格ではない。どちらにせよあの、呆然としているラビの浮気相手の女性は保護せねばなるまい。神田の存在を知っていたかどうかに寄らず、女性が怪我をするような事だけは避けておきたい。後が面倒だ。
 だがアレンの予想に反して神田には相変わらず動きはない。彼の長めの前髪は彼の表情を隠してしまっている。

「神田」

 落ち着いて、それとも気を落とさずに?
 続ける言葉を選びきれないままアレンは隣の神田の顔を覗き込んだ。
 
「神…………」

 その神田は何時もと同じ無表情に、ほんの僅かに、それこそ面白がるように口の端を上げて。

「続けろ」

 そうベッドの上の二人に言い放った。
 荷物をドサリと床に放り投げ、彼はソファーにどっかりと座った。それから凍り付いたように動かなくなった二人に、顎で示すようにして再度促す。

「聞こえなかったのか? 続けろつってんだよラビ」
「ユ、ユウ?」
「お前がどんな風に女を抱くのか一度見てみたいと思ってた」

 ぱーどぅん?

「ちょ、神、」

 この人ショックでおかしくなったんだろうか。
 そんな疑問を抱きながら声をかける。無視された。

「ほら、さっさと気張って腰振れよ。そんなんじゃいつまで経っても終わんねーだろ」

 それとも突っ込んでるだけでイきそうな程その女はイイのか、と凡そ神田の口から放たれたとは思いがたい台詞にクラリと目眩がする。
 いや、アレンとて神田に幻想を抱いていた訳ではない。ただ彼はアレンの知る限り多感な高校生の時分から猥談を好まず、優れた容姿に、或いは真摯に部活に打ち込むその姿勢に惹かれて告白する女生徒を断り続けていた。その神田がラビと付き合い始めた事には仰天したものだ。その後彼らが歳相応に段階を踏んで、体の関係を持ったことだって知っている。性的にノーマルなアレンは彼らの関係や行為の詳細など知りたくはなかったが。

 足を組んで頬杖をついた神田は下品な言葉でベッドの上の二人を煽る。だが如何に煽られても続行は不可能だろう、こんな状況じゃとっくに萎えてる筈だ。
 それよりラビと同じくらい青ざめている女性がいい加減気の毒で、アレンはそこらに落ちていたほんの僅かに湿ったバスタオル(恐らくラビか彼女かのどちらかがシャワーを浴びた際に使ったんだろう)をバサリと二人に掛けた。

「…………ラビ。いい加減抜いたらどうです。君に同情はしませんが知らない男に視られてるお相手が気の毒でしょうが」

 アレンの言葉に漸く正気を取り戻したか、金切り声を上げた女性がラビを突き飛ばすようにしてバスタオルをひったくって飛び起き、ベッドの直ぐ横に落ちていたワンピースやバッグを抱えてバスルームに走り去った。慌ただしい音と何かが壊れるような音がして、それからバタバタと背後で走る音とドアが開かれ、閉まる音。

「あの女、何か壊しやがった」

 邪魔立てしたアレンを責める事も無く、神田は呟いた。

「ラビが買い直せばいいだけの話です。…………所でラビ」
「…………」

 視線をラビに戻せば彼はベッドの上で全裸で土下座の真っ最中だった。

「遺言があるなら聞いてあげますよ」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 アレン自身はノーマルだが、同性愛や同性愛者に嫌悪感があるタイプではなかった。嫌悪感はないが、同性愛も異性愛も、等しく「恋人」という物に対して追わねばならぬ義務がある筈だと信じている。その内の一つが相手に操を立てる事だ。最初から複数の相手と楽しみたいならば恋人など作らねばいい。それこそアレンの後見人のようにだ。
 アレンはラビにもっと深く土下座させようとその頭を力いっぱいベッドに押し付けた。もがくラビを見せて神田の反応を伺おうと顔を上げる。だが神田はそこに居なかった。

「…………あれ?」

 がちゃ、というドアの開閉音の少し後に二本のペットボトルを手にした神田が戻って来た。そこで土下座のままもがくラビとそのラビの頭を押さえつけているアレンに片眉を跳ね上げる。

「何やってんだモヤシ」
「何って…………」

 神田が軽い動作で放り投げたペットボトルは丁度アレンの手に収まった。アレンがペットボトルを手にした結果開放されたラビは涙目で恐る恐る神田を見上げる。

「…………君、怒ってないんですか?」
「怒る? 何にだ」

 無表情で神田は首を傾げた。その反応に面食らったのはアレンと、そしてラビもだ。

「何って…………浮気されたんですよ?」
「あぁ、確かに突っ込んでたな」

 寸止めじゃなかったなあれは、と何でもない事のように神田は言う。

「お、怒ってないんさ?」
「普通浮気されたら怒るでしょう?」
「あー…………だって初めてじゃねぇし」
「「…………は?」」



 アレンはノーマルでラビュの関係に嫌悪感はないんだけど目の前でいちゃつくとかは勘弁願いたい人。(殴りたくなるから)



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