一応R18



<夜戦>

 天蓋の内では熱を帯びた吐息が漏れ聞こえる。仰け反った白い喉に、喰らいつきたくなる、と王は考えた。
 自分で抜き身の雄に触れるよう命じても、意味が分からなかったのか欲情に喘ぐだけのユウに焦れ、手を導き掴ませ、そしてその手を動かしてやるまでして漸く理解出来たらしい。

「あ…………、ぁ、ふ、」

 先走りが滴る。足の間の手を動かして、懸命に快感を追いかけている最中。不慣れな為か、それとも雄を受け入れるよう躾けた為か、中々達する様子を見せない。
 
「まだか」
「っ、う、ぅ、」

 寝台の布に爪を突き立て、厭々と首を振るのを暫く眺めやっていた王もまた、ジリジリとした焼け付くような感覚に捕らわれて忍耐が足りない事だと小さく自嘲する。
 その内に、自身の雄を愛撫していたはずのその指は後孔へと這わされた。見守る王の眼前で、自らの指で自らの後孔を犯し始める。鼻に掛かった声にならない声はまるで仔犬の鳴き声のようだ。
 甘い鳴き声が、一層強くなった。想定外に良く躾けられた振る舞いに王は忍耐とやらを放り出す選択をする。

「…………」

 王は無言でユウの前に立ち、下衣の前を寛げた。取り出した物をユウの口元に差し出すと、快楽に潤んだ眼で見上げたユウは、珍しくも王の意を組んで唇に含んだ。
 王の先端を吸う懸命さはまるで生まれて僅かの赤子が母の乳を求めるのに似ている。
 凡そ情欲からは遠いことを考えながら、ユウの拙い舌技に王は目を細めた。ハレムの性技に長けた女達とは比べうる由もない。だがその懸命さは王を満足させた。

「良い子だ」

 暫くの後、王はするりとなだらかな丘を一撫した。期待にか、ユウは誰に教えられていないにも関わらず、腰を高く掲げて受け入れる姿勢を作る。
 散々待たされた後に得た漸くの快楽に、高らかな嬌声が響きわたった。 






 片腕を寝台の外に放り投げたユウは仰向けでぐったりとしていた。哀れなほどに疲労困憊した姿のその直ぐ傍では情事を終えたままの姿の王が、何時の間にか置いていかれていた書状に目を落としている。急ぎは急ぎだったのだろうが、王の「お愉しみ」を邪魔立てする程の事でも無かったのか。

「…………」
「どうした」

 王は背中にすり、とそれこそ猫のように擦り寄ってきたユウの頭を軽く撫でる。未だ朱の引かない顔で物言いたげだ。

「足りないか」
「…………」

 甘い毒は未だその身に燻るか、と王は低く笑う。
 そうしてから書状を灯りに透かすようにして、ユウの目の前へ。

「?」
「悦べ、お前の仕事が増えるぞ」

 くつくつと笑う王の眼差しは心底愉しげだ。
 齎されたのは間諜からの報告。此処の所ちらちら見え隠れする北の民――――――それが遂に此方の領土に向けて進軍するという。
 その愚かさに王は嗤う。敵軍を領土に招き入れてから殲滅するのは、此方の最も得意とするところ。それを理解せずして、事を構えようとは、と。

「…………あんたも大概、悪趣味だ」

 愉しげな王の姿と口にする言葉の物騒さとに、些か顔色を戻したユウは嘆息。甘い毒の残り香に痺れるような己の掌を握り締めた。
 王の愉しみは美姫に美酒、それから歯向かう者共を踏みつぶす事。――――――ならばその時には、「猫」も王の隣で存分に狩りに興じる事になるだろう。

「そうでもなければ、国主などという面倒事はやってられん」

 さらりと自らの玉座を面倒事と呼び捨てた王は、背に寄りついているユウに腕を伸ばす。

「ん、」
「暫くは砂の上の寝床だ。覚悟しておけ」

 寝台の上に再びうつ伏せに押し付け、散々踏み荒らした所を指で抉じ開ける。

「っく、ぅ、」
「此方の進軍は明日の夜としよう。昼の間に武器と牙を研いて置くことだ」

 ――――――当分の伽の相手は、お前だけになるか。
 合間にそんな笑みを含んだ言葉を何処か甘く聞きながら、ユウは再び襲いかかってきた熱量に声を上げた。
 


 着実に猫のスキル(何)が上がっていく。