※大した表現もないですが強姦につき注意




「…………」

 こちらの上着の首元を掴んで、胸の下まで一気に引き裂いた王は無言で俺を見下ろしていた。
 王の意図は読めない。
 だが、どうでもいいが、殺すなら早くして欲しい。

「…………何だ、男か…………」

 いっそ拍子抜けしたような声。何を期待していたのかは分からなかった。男かどうかなんて、見れば分かったことだろうに。
 ああ、非力故にそう思われたんだろうか。確かに砂漠で軍勢相手に太刀を振るうような王程には力は無いだろう。
 暫くの間の後、王は笑った。
 その笑顔は知っている類のものだった。俺の所有者達が、命令を達成できなかった時の俺達を痛め付ける時に浮かべる加虐的な表情だ。
 ぞわり、と背中に悪寒が走って冷たい汗が浮かぶ。
 一方的に振るわれる所有者達からの暴力に抗うことは許されなかった。抗えば、その時受ける痛みよりも尚酷い物を与えられるか、最悪処分される事は骨身に染みていた。実際に使い物にならなくなったと判断された誰かが、生きたまま所有者の愛玩動物の餌にされるのを見たことがある。
 脳髄の一片にまで染み込まされた懲罰への恐怖が、今この王を前にして顕になる。それでも肩の一つも震えなかったのは、感情を体の動きに繋げないように徹底的に訓練されたからだ。

「生憎だが、男に加減してやる気は無いぞ?」

 酷薄な笑みに、これから俺が受けるものはいっその事死の方がきっと易しいのだろう。そう悟った。
 王は、俺の体を一度強引に引き上げるとうつ伏せにして放り出した。縛り続けられた事と臓腑を痛めた所為でその動きに抗うことは出来なかった。投げ出されたときの衝撃から、臓腑や骨に走った痛みの余り咳き込む。苦しさと痛みに久しぶりに涙が溢れた。声は上がらず掠れた、浅く早い呼吸だけが口元から溢れる。

「まだくたばるなよ? くたばるんなら吐いてからか、せめて俺を愉しませてからにしろ。お前の所為で憂さ晴らしの機会が無くなったんだからな」

 女奴隷の衣装の下衣に王の手が掛かる。絹で仕立てられたそれは上着同様あっさりと破り取られた。晒された肌が本能が感じる恐怖に泡立つ。
 …………腎部を割られて間を晒されたその時すら王の意図を察することは出来ず、固く目を閉じ。

 そして捩じ込まれて来た熱とその痛みに、絶叫した。

「あぐっ!? ――――――あ゛ぁぁぁぁっ!?」
「っ、は、やっぱり女程に具合良くはならねぇか」

 痛い、熱い、

「ひ、ぐっ…………、!」

 痛い、痛い、痛い、
 痛い、苦しい、
 何でこんな事をするんだ、さっさと殺してくれればいいものを!
 体の奥を割られて、痛みに無様に悲鳴を上げるしか無い。逃れようと体を捩れは、逆に奥深くまで刺し貫かれた。

「あぐ、っ、あ、あぁぁぁぁっ!」
「叫ぶな、うるせぇ」
「ん、ぐっ…………!」

 掌で口元を覆われて、息が出来なくなる。
 何度も舌を噛み切ろうとした。だけどその度に阻まれて、結局それは叶わない。
 ぐちぐちと嫌な音を立てる所がどうなっているのか、想像することすら出来ない。ただ、後ろから覆い被さってくる男が恐ろしい。恐ろしくて怖くて逃げたいのに、それは絶対に不可能だ。何時まで続くか知れない痛みに、意識がふっ、と遠のきかける。

「う、ぐっ、んん、んんんっ、」

 抽挿が早まり、腰が軋むほど強く何かを打ち付けられた。体中何処も彼処も悲鳴をあげる。
 暗殺者としての仕込みの頃だってこんな痛みを与えられたことはない。

 ただただ痛みだけを伴う得体の知れない行為は、夜を徹して、征服者が満足するまで続けられた。










「おはようございます、陛下」
「あぁ。…………一晩中そこにいたのか、ご苦労なこった」

 慇懃に腰を折る武官に鷹揚に応えた王は口元だけで淡く笑った。
 文官の青年は眠そうな顔で、首だけ折るようにして頭を下げる。

「ハレムの浴場に湯浴みの準備が整っております」
「は、随分と用意がいい」
「所で。中の罪人は死にましたか? 死んだようなら後は始末しておきますが」

 さらりと大した事もないように言い放つ武官に肩を竦めた王は、

「まだ生きてる。虫の息だがな。――――――夜まで生きてたらもう一度尋問する、殺すなよ。何か食わせとけ」
「…………畏まりました」

 あからさまに「不満」を浮かべた武官に溜息を付いた。

「…………。おいラビ、コイツ見張っとけ」
「へーい」

 苦笑顔で応じた文官に後を任せ、王はハレムへと向かう。
 その後姿を見送った二人は、

「…………生きてたんですね。途中から声が聞こえなくなったからてっきり殺されたものかと」
「いやいや、殺したんならもっと早く出てくるっしょ。あの人に死姦趣味なんてねーさ」
「あったら驚きです。…………生きてる、ねぇ。所でラビ、罪人が昨日の怪我が原因で持たなくて死んだなら誰のせいでもないですよね」

 目を細めて剣呑な台詞を吐く同僚の武官に苦笑いの苦さを増した文官は、さらりと勅令に背こうとする武官を窘めた。

「だーめだって。ムカつくのは分かってるけどさぁ。へーかが殺すなっつったんだから殺したらマズイっしょアレン」
「どうせ死刑じゃないですか。しかも昨日一晩掛けて師匠が責めたのに吐かないんでしょう? 手足でも切り落とした所で吐くかどうか」
「あー、ダルマにすんのも無しな。へーかがやれっつってからにするさ。…………目の前でやられて、腹立つのは分かってるけど」

 武官の中でも上位に位置し、若くして王の護衛を担う長であり王を主とも師とも仰ぐ少年が、王の直ぐ側に控えていたのにもかかわらず襲撃者に出し抜かれ、蛮族が束になっても傷一つ負わなかった偉大なる王に傷をつけられた事に憤懣遣る方無いのは分かっている。彼は王と王に捧げた忠誠を誇っているのだから。

「…………。僕の部下に一応世話を命じておきます」
「ん、それがいいさ。お前がやったらうっかり手が滑ったーで首落としちまいそうだもんな」








「これか、陛下を襲った重罪人っつーのは」
「隊長が切れてるぜ、勘弁して欲しいよな折角戦も終わったところだっつーによ?」
「聞いたか? あの時宴会場にいた奴ら、全員揃って腕が鈍ってるって、朝から砂漠の縦断と乱戦訓練するらしいぜ」
「うへぇ、俺正門の警備で良かったぜ」

 こんな暑い日にそれじゃあ本当に死人が出る、隊長は容赦がないからな、と警備隊の二人は「特別室」の中で話し合う。
 大きな寝台の上に転がされた罪人は体を力なく横たえたまま、微かにその胸が上下しているだけだ。
 モノのように罪人を転がしつつ寝台からシーツを引き剥がし――――――それは本来女奴隷の仕事であるが、死に掛けとはいえ王を襲った危険人物がいる場所では危なくて任せられない――――――、新しいモノへと変える。

「でもよぉ、誰よりも隊長が他の奴らの二倍も三倍もやるんだぜ? 文句も着けられねーよな」
「あの人もまだ若いのになぁ、良くやるぜ…………」

 愚痴から歳若い隊長への感心を口にした彼らは、ふと動かない罪人へと視線を向けた。

「こいつ、野郎だって?」
「らしいぜ? 女奴隷のフリしてたらしいが…………これじゃあ顔隠してなくとも分からんな」
「はーん。それで陛下に「尋問」された訳か。まぁいつもだったら今頃まだハレムからお戻りにならない筈だからな。何日も女断ちさせられといて昨日は漸く…………って所だしなぁ。そりゃあ腹も立つだろうよ」
「はは、ちげぇねぇ。今頃気に入りと愉しまれている所だろうな」

 上司の居ぬ間にと下卑た話題で笑う彼らの声に、罪人は微かに呻き声を上げた。鈍い動きで泣き腫れた瞼が開く。

「お? 目ぇ醒ましたのか」
「ちゃんと生きてんだなぁ、あのまま起きないかと思ったぜ」
「…………、」

 開かれた虚ろな眼差しは暫し宙を彷徨い、それから警備隊の二人の腰に挿してある剣にぴたり、と吸い寄せられた。



 程なくして、小さな悲鳴が二つ上がった。



 アレン様マジギレ中。不甲斐なさと憎悪で訳分かんないことになってる。
 ラビは冷静だけど内心早く処分すればいいのにとは思ってる。
 陛下はハレムで湯浴みしつつ愛妾とお愉しみ真っ最中。
 


  ???×神田トップへ
 小説頁へ