死んだのか、生きているのか分からない。
「ラビッ!!」
アレンの声にはっとする。
―――――――生きて、いる。蛋白質の焦げた臭いが鼻に突く。
「嘘だろ…………」
ティキの茫然とした声に、俺は奴の手元を見た。奴の手には白い手が重ねられ、無理に銃口を逸らさせられたのだと知れる。
「…………ユウ、」
「…………」
相変わらず反応は無い。だけど、そこには確かに彼女の意志がある。
―――――――ぽとり、と一滴。綺麗な涙が、ユウの頬から顎を伝い、彼女を捕えるティキの腕に落ちた。
愛じゃ無かったのかも知ない。(それでも俺は、)
あの赤い髪の少年の言う通り、所有欲なのかもしれない。(それでも、俺は。)
だけど誰にも文句は言わせない。
汚泥の中で尚輝きを失わない輝石を見つけて、それを求める事が何の罪になる?
あえて罪を裁くというならば、それが輝石である事を責める方が先じゃないのか。
けして手に入らないと、俺は知っていた、から――――――
(俺は、彼女を壊したかったのか 手に入れたかったのか)
腕の中のユウが虚ろの目のまま、腕を伸ばした。
その先には、赤い髪の――――――
「くそっ…………」
知らず内に、悪態をついた。
認められなかった、認めたくなかった!
壊しても尚、手に入らないのだなんて!!
(なら、いっそ…………殺してしまおうか?)
ふと振って沸いたそんな考えに、昏い笑みが思わず零れた。
殺したら、俺だけの――――――…………
「「っ!!」」
鋭く息を呑む。
ティキが、袖口から剃刀を一本取り出して、
「お前っ…………やめろっ!!」
俺は、思わず上ずった声で叫んでた。
小さな剃刀をユウの首筋に当て、僅かにそれを奴が引くと薄く一本赤い線になる。
力を籠めたなら容易にあの剃刀はユウの皮膚を裂いて、その下の血管を絶つだろう!
「頼む、やめてくれっ…………!!」
俺が叫んでも、その声は奴に聞き入れられない、だけど!
「やめろ――――――!!」
「「!?」」
俺が叫ぶのと、障子が蹴破られたのは、同時だった。
<続>
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