師匠と別れて一週間後。
 僕はハイ・ラガードの酒場にいた。



 目を醒ました時、既に師匠の姿はなかった。
 それどころか現金はおろか、換金価値の高いような荷物は全て無く、服の裏側に縫い付けてあった紙幣がなければ今頃僕は一文無しだっただろう。
 その僅かばかりの蓄えを元に、賭博場で何とか旅費を捻出し、何とかハイ・ラガードまで辿り着く事が出来た。
 小さく、静かな国と聞いていたけれど、あのお触れの効果か…………酒場にはかなりの人数の冒険者がいた。
 本当は一人で挑んだ方が取り分は多いに決まっているけれどそれは余りにも無謀。なので僕も何処かのギルドに属そうとした…………のだけど。

「…………はぁ…………」

 通算十四回目の失敗。
 僕は一人でカウンターで溜息を付いた。
 
「気の毒にな、ぼうず。普段だったら、お前さんみたいなルーキーでも教育がてら拾ってやるっつー心の広いギルド、いくつかあんだけどなぁ…………」

 酒場のマスターがそう言って僕の肩を慰めるかのように叩いた。
 …………そう、今や賞金という餌をぶら提げられた冒険者達は獣も同然。当然何処よりも早く最上階に付く為には当然有能なメンバーを入れたい訳で…………
 僕のように冒険者としての経験が皆無な人間は、仲間に入れてもらえないのだ。

「ったく、最近きやがったようなギルドは能力はあってもマナーがねぇ。大公宮に挨拶もしねぇような奴もいるし…………」
「ははは…………」

 焦る冒険者達の中には元々いたギルドと衝突するような人達も多いらしい。
 …………まぁ僕の目的だって褒められたものじゃないし、あんまり言えないけど。 

「引き続き加入希望の看板には載せといてやるけどよ、ぼうず。あんまり期待しねぇ方がいいかもな」

 何でも僕のパラディンという職種は、ある程度の所まで行っているギルドからは余り好まれないらしい。
 初心者だけのギルドの方が、活躍できるとか何とか…………  
 まあまずその初心者だけのギルドがないんだけど…………

「ぼうず、いっその事自分でギルド作っちまうのはどうだ?」
「…………初心者で余所者の僕なんかが作って、誰か入ってくれますかね…………」
「んー、そりゃ何とも言えねぇが…………お前さんみたいに何処にも入れねぇ冒険者もいねぇ訳じゃねぇ。案外急がば回れでいいかも知れねぇぞ?」

 其の時、僕はヤケクソになっていた。
 初心者の余所者に命を預けようなんていう酔狂な人はいないって知ってたけど、いっそそれもいいかな、なんて。

 そして名前もろくに考えずに決めた僕のギルド「BRS」に酔狂な加入希望者が現れたのは、二日たってから、だった。

3へ
1へ

コネタトップへ  



小説頁へ