酒場を出た僕の視線は、先の方で佇んでいた彼に釘付けになった。

「…………ラビ、リナリー。ちょっと待っててもらっていいですか?」

 彼らにそう言い置いて、僕は神田の方へと歩を進めた。





「……………………」

 彼の後方三メートルの辺りまで来ると、彼が無言で振り返った。
 視線は先程の事もある所為か、酷く鋭い。

「初めまして、僕はアレン・ウォーカーって言います」

 ニコリ、と微笑んで見せて右手を出した。
 しかし神田はそれを無視して、僕を睨み付けた。

「…………何の用だ」
「君を誘いに来たんです」 
「…………誘う?」
「はい。僕ら「BRS」は出来立てのギルドです。是非君に入ってもらいた――――――」
「断る」

 うわ…………間髪入れずに断られた。
 神田は僕のいる方へと歩き出し、そのまま擦れ違う。
 彼は擦れ違い様、低く吐き捨てていった。 

「新人のお守りなんかしてられるか。――――――それに、群れる奴は嫌いだ」
「――――――…………」

 ――――――あ。

 うわぁ…………想像してたけどこれは予想より酷いなぁ…………
 それっきり彼は振り返らず立ち去ってしまった。

 振られた形の僕はすごすごとラビとリナリーの元へ戻る。

「すいません、振られちゃいました」
「って、勧誘してたの!?」

 二人はびっくりしたような顔をした。
 だ、だって強いらしい、し。 

「はー、怖い物知らずさね…………でもそういうの、嫌いじゃないさ」

 ラビが苦笑しながら、僕の頭をガシガシ撫でた。

「神田もね、悪い人じゃないんだけど…………」
「ってリナリー知り合いなんですか!?」
「知り合い、っていうか…………ヤマトもギルドだったから。特にヤマトは回復のできる人がいなかったから、よく薬泉院に来てたわ。兄さんが担当だったから、兄さんとは親しかったと思うけど。…………でも、ヤマトにいた頃の神田はあんなに取っ付き難い人じゃなかったわ」
「まぁ、人が変わるだけの体験だろうさ」

 致し方ない、とラビが腕を組む。
 けれど、僕にはどうしても気がかりな事があった。
 擦れ違い様の彼の瞳は、とても哀しそうな、傷ついたような色を浮かべていたから。
 一人は、誰だって寂しい。
 
「…………怖いの、かな?」

 誰ともなしに呟く。
 また誰かと仲間になっても、その誰かを亡くすのが怖いから、ああやって――――――
 こんな事を本人に言ったら殺されるだろうし、他の人に言ったら笑われるだろうけれど、

 僕には、彼がとても脆く見えた――――――。


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