結局僕らは他に縁に恵まれず、三人で世界樹の中を探索していた。
初めて見る魔物、初めて見る世界樹の中。全てが新鮮だった。
…………次第にそんな事を言ってる場合でもなくなって、僕らは何故か鹿とか鹿とか鹿に追っかけまわされたり蟷螂のお化けみたいなのに追っかけまわされたりと散々な目に遭いだしたのだけど。
「キュア!」
今も戦闘を終えた僕はラビに回復して貰っている。
僕の役目は盾としてリナリーとラビを護る事。
自然一番怪我する事は多かったけれどこんなのどうって事ない。
「ありがとうございます、ラビ。…………結構深くまで来ましたよね」
「そうさね、もうじき二層さ」
「二層って、確か一年中紅葉してるんでしょ?」
「そうそう! 俺も前行ったけど、初めて入ると圧巻さ! …………ま、その後しばらくカボチャ食えなくなるような目に遭ったけど…………」
カボチャ? おいしいのに。甘く煮ても焼いても蒸かしても揚げても美味しいのに。
「だけど、二層に行くにはおっかない魔物がいるんだよなぁ…………どっかのパーティが倒してくれてればそのまま行けるんだけど…………」
「他力本願って奴ね…………」
「だって現実問題俺達三人しかいないんさ、無理がある」
「あー…………やっぱ神田仲間になってくれないかな…………」
僕らが三人で頭を抱えていると、
ギャオオオオオオオッ!!!!
突然、大きな声が響き渡った。
「「「!!」」」
「何、今の…………!?」
「魔物の声だ、近い!!」
「もしかして、キマイラとどっかのパーティが戦ってるんじゃ」
「キマイラ…………?」
「此処のボスさ。ライオンっぽいんだけど色々混ざってる感じの…………」
ガァァァァァァッ!!!
「…………ねぇ、大丈夫なのかしら? 実力派のパーティならいいだろうけど、もしうっかり出会っちゃったパーティだったりしたら…………」
「「…………」」
僕らは顔を見合わせて――――――走り出した。
「うわっ、」
「ひっ、ひぃ、たす、助けて、」
大きく開けた場所に出た僕らは、直ぐの所で一人の男の人に足首を掴まれた。
…………怪我してる!?
「ラビッ」
「…………ヒール!!」
ラビの中級の回復魔法の光がその男の人を包み込んだ。
「大丈夫ですか…………あれ、貴方は」
…………この間、酒場にいた人だ。
神田を取り囲んでいた内の一人。
「何があったの!?」
「あ、あの化け物みてぇな奴が突然…………俺の仲間達が襲われて、それで、」
「まだいるのね!?」
「まっ、待て、あいつ化け物みてぇな奴だったんだぜ!? それに、今、ヤマトのあいつが…………」
「…………え、」
その言葉を聞いた僕は、それ以上そこにいる事が出来なかった。
止める言葉をそれ以上聞く事も無く、駆け出す。
そして扉のその先、広がる血臭に一瞬息が止まった。
「「「な…………」」」
そこにあったのは、夥しい数の魔物の死体。
いずれもが鋭利な刃物で斬ったかのように、胴と頭が離れている。
「これ、やっぱり、彼だ…………」
「まさか、一人でこんな数…………!?」
ギャオオオオオオオッ!!!!
再び響き渡る声に、より近い所でのその迫力に一瞬体が凍り付く。
それを無理矢理に動かして、僕らはその戦場へと向かった。
「早くメディック叩き起こせ間抜け共っ!!!」
――――――その場で最初に僕らが耳にしたのは、そんな怒声だった。
「ひ、ひ…………」
「うぁ、あ…………」
その場。
血塗れの惨状であるその場は、まさしく混沌だった。
紅い色の小型の魔物達の死体。
一番奥、階段前で唸っている大きな魔物。
そして、扉の直ぐ近くで腰が抜けたかのように座り込んで震えている男の人達。
――――――その人達を背に庇いながら戦っていたのは、神田だった。
彼の漆黒の出で立ち、見間違える筈が無い!
「っクソ、雑魚はお呼びじゃねーんだよっ!」
今も再び襲い掛かってきた小型の魔物を一刀の元に切り捨てた!
「おい、さっさと行け鈍間!! 死ぬぞお前ら!!」
背を向けたまま、罵っているのは動けない男の人達らしい。
「エリアキュア!」
素早く呪文を唱えたラビが、その人達に向かって回復魔法を掛けた。
「歩ける? 大丈夫?!」
「こ、腰が、」
「リナリー、扉開けて! 運び出します!!」
彼らの回復を待つより、運び出した方が早い!
ラビと二人で、半ば引き摺り出す様にして彼らを外へ逃がした。
五人全員を連れ出した僕は、すぐさま扉へ向き直る。
「待てっ!」
――――――僕らを呼び止めたのは、運び出したうちの一人だった。
「何ですか!?」
「待て、行くな! あいつは尋常な強さじゃない、お前らだってまだ此処に入って日の浅いパーティなんだろ!? 殺されるぞ!!」
「でも、神田が!!」
「…………あいつは強い」
「でも、あれじゃ多勢に無勢さ、…………あいつブシドーだ、長期戦になればなるほど不利なんさ」
「だが!」
「五月蝿いっ! 仲間を見捨てただのごちゃごちゃ言ってたあんた達に、言われたくないっ!!」
「「「…………っ」」」
「アレン、」
「行きましょう」
リナリーが、きっ、と扉を睨んだ。
――――――僕らは、その扉を、再び開いた。
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